研究内容
HTLV-1
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は、腫瘍ウイルスであるHTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)感染が原因で起こります。このウイルスはTリンパ球に感染し、宿主の染色体にウイルスのゲノムを挿入することで、潜伏状態を維持します。感染は、母乳を介した母児間感染が主な感染ルートとなっています。このウイルスは、長期間潜伏後、キャリアの数%にATLを発病させます。ATLの他にも、神経難病であるHTLV-1関連脊髄症 (HAM)などを引き起こします。これらの疾患は、難治性であり、予後も良くありません。ATLはかつて九州や沖縄の風土病と言われていた白血病ですが、現在でも日本には、その感染者(キャリア)が約100万人、世界では1,000万人以上いると推定されています。鹿児島県は、白血病による死亡率が全国で最も高いことが知られており、また、HTLV-1キャリアやATL、HAM患者さまが多くおられます。
ATL
ATLは、進行が緩慢なくすぶり型、慢性型と、進行が急速な急性型、リンパ腫型に分類されます。代表的症状として倦怠感、高カルシウム血症、リンパ節浸潤、皮疹、免疫不全などがあります。治療は、急性型・リンパ腫型に主に化学療法や造血幹細胞移植が行われますが、未だ標準的治療法は確立していません。くすぶり型・慢性型も同様に治療方法が確立されておらず、また経過観察中の急性転化も多いことから、新たな治療薬の開発が強く望まれます。当研究室では、分子レベルでの病態解明を通して、患者さまに新たな予防法や治療薬を届けることを目的に基礎研究を進めています。